暑かった夏も終わり、心地良い風が吹く季節となりました。
学生のみなさん、後期もがんばりましょう!
今回は、文学研究科 英文学専攻博士後期課程3年の都地沙央里さんにインタビューしました!
インタビュー日:平成27年8月28日
インタビュー?文章:女性研究者支援室員 柴田
柴田: 都地さん、こんにちは。都地さんは、福岡女子大学の出身ですか?
都地さん:はい、大学も福岡女子大学です。学部4年間、大学院修士課程2年間、博士後期課程(以下、博士課程)3年間
合わせて9年間福岡女子大学に通いました。今は10年目です。
柴田: 福女歴が長いですね!誰よりも大学に詳しくなりますね!
柴田: この度、都地さんの研究が本学の地域連携センター学術研究助成金に採択されましたね。おめでとうございます!
都地さんは、博士課程で研究をされているとのことですが、
わたしは博士課程の方にインタビューをするのは今回が初めてなんです!
大学のキャンパスには、どのぐらいの頻度で来られるのですか?
都地さん:週に3日ぐらいは来ていて、自分の研究をするときや、先生に研究の相談をするとき、
また、大学で非常勤講師をしているので授業があるときは来ています。
研究について
柴田: 研究テーマについて教えてください。
都地さん:研究テーマは特にイギリスで出版された古い書物について、
書物がどのように印刷?編集されたかという書物文化史や出版史に関連する研究をしています。
その中でも「きつね物語」という動物叙事詩がイギリスでどのように出版されて
広まっていったかということを研究しています。
柴田: 都地さんが修士課程の頃に書かれた「きつね物語」に関する論文を読ませていただきました。
今もずっと「きつね物語」をテーマにされているのですね。
都地さん:「きつね物語」という題で、様々な版があります。
修士課程の論文では、その版のうちのいくつかを取り上げているのですが、他にも版があるため、研究を続けています。
※柴田 注)
都地さんは、2012年に英国初期印刷本研究で、日本英文学会九州支部の奨励賞を受賞されています!!
柴田: わたしは今回「きつね物語」というお話を初めて知ったのですが、有名なのですか?
都地さん:日本では、そんなに知られていませんが、ヨーロッパでは有名なお話で、現代でも漫画化されていたりもします。
柴田: なぜこのお話をテーマにしたのですか?
都地さん:古い本の研究がしたいと思い、ゼミの先生に相談したところ、
英国の「きつね物語」の出版史はまだあまり研究されていないため研究テーマにしたらどうかと勧めてもらいました。
日本語版が出版されたばかりだったので、まず日本語訳を読んで、研究を始めました。
柴田: 大学に入学した頃から、古い本の研究がしたかったのですか?
都地さん:大学に入学した頃は、シェイクスピアなどの英文学を研究するのかと思っていましたが、
入学してみると英語学や英語の歴史や書物の歴史など、様々な勉強ができて、その中で書物の歴史が一番楽しいと思い、
古い本の研究をすることにしました。
修士課程に進学したいことをゼミの先生に相談したところ、大学院に行っても続けられる研究テーマであるため、
卒業論文でも「きつね物語」をテーマにすることを勧めていただきました。
柴田: では、「きつね物語」とは長いお付き合いなのですね。
柴田: 学部と大学院とで、勉強の仕方や研究の仕方は、どのように違いますか?
都地さん:学部時代は、先生が用意されたテキストやテーマに沿って勉強しますが、
大学院では、研究するテーマを自分で決めて能動的に進めていきます。
私の場合は、テーマは先生が勧めてくださったものですが、
どのような切り口で研究するか、といった点は自分で決めていかなければなりません。
柴田: 都地さんにぜひ伺いたいことがあったんです。
昔のイギリスの出版物に使われている単語で、現在使われているものとは綴りが違っている言葉があるようですが、
これらの単語の意味はどのようにして理解するのですか?
都地さん:綴りは違うのですが、綴りを固定する意識がない時代の単語なんです。
例えば、基本的にyとiは交換可能です。
読み重ねるうちに、だんだん慣れていって、現代語に置き換えられるようになりました。
中世英語の辞書があるので、それを使って調べることもできます。
字体も今のローマン体ではなく、ゴシック体の場合もあります。
柴田: 学部時代の授業で、今の自分に活かされている授業はどのようなものですか?
都地さん:すべての授業が、今の自分に活かされていると思います。
例えば、英語史の授業は古い英語を読むことに役立っていますし、アメリカ文学の授業で学んだ批評理論が、
イギリスの古い書物を見るときの観点につながったりしています。
柴田: では、もっと学部時代に勉強しておけば良かったと思っている授業はありますか?
都地さん:私は学部時代にTOEICやTOEFLの勉強をしていなかったので、実用英語の勉強をもっと早くすればよかったと思っています。
博士課程になってから海外留学をするときに初めて勉強しました。
柴田: 留学されていたのですね?どこに行かれたのですか?
都地さん:デンマークとイギリスです。デンマークは大学の交換留学生として行き、
イギリスはEU-IJ九州博士課程学生派遣制度により、「きつね物語」の調査のために行きました。
柴田: 研究の材料となる、古い文献の底本は、データや原本を見られるのですか?
都地さん:データになっているものもあり、専門のサイトからダウンロードできるのですが、
そのサイトにはアクセスの権限があり、ダウンロードできないこともあります。
また、現地の188体育平台へ行き、データを入手することもあります。
しかし、オリジナルを手に取ってみるのは至福の時です。
柴田: 研究をしていて楽しい瞬間や達成感を感じる瞬間などはありますか?
都地さん:自分の論文が完成したり、論文発表をして学内外の先生方からコメントやアドバイスを頂いたりすると、
意欲ややりがいを感じます。
柴田: では、研究をしていて行き詰ったことは?
都地さん:大きな行き詰まりはまだ経験していませんが、
小さな行き詰まりを何度も経験する中で、担当の先生に相談して解決して、ということを繰り返しています。
柴田: 行き詰まったときの解決方法は?
都地さん:違う論文を読んでみたり、身の回りの整理整頓をしてみたり、
今手を付けていることを後回しにしたりします。
柴田: 先日、女性研究者支援室主催の、「英語プレゼンテーションセミナー」というセミナーを開催しました。
都地さんご自身、英語で論文を書かれたりすると思いますが、英語で論文を書くとき、どのようなことが大変ですか?
都地さん:英語で論文を書くとき、全てにおいて大変です。
自分の伝えたいことを英語でうまく表現できない大変さを感じており、洗練された英語の感覚を身に着けたいです。
良い英語の論文をたくさん読んで、英語の感性を身に着ける練習をもっとしなければなりません。
論文の出だしをいかに決めるか、これに特に時間がとられます。
柴田: 学部に入学した時から、英語や英文学に興味があったのですか?
都地さん:実は、英語は苦手だったんです。国語が好きだったのですが、国文学と英文学のどちらに進学するか悩みました。
でも、敢えて苦手な英語に関する英文学を選択したため、入学してからは大変でした…。
柴田: すごいですね!英語が苦手だったのに、英文学科に進学して、博士課程まで進まれて…!
都地さん:苦手で知らないことだったからこそ、英語の成り立ちや歴史などの外面的なことを知ったとき、
その内側を知りたいという興味が湧いたと思います。
柴田: 今後の研究についてはどのように考えているのですか?
都地さん:まずは博士論文※を完成させることを目標にしています。そして、海外の学術誌に投稿したいと考えています。
※「博士論文」の説明はページの一番下を見てください
プライベートについて
柴田: プライベートについてお話を聞きたいと思います。趣味は何ですか?
都地さん:読書です。太宰治や谷崎潤一郎などが好きです。
柴田: そうなんですか!英語の本を読まれているかと思いきや、ですね!
柴田: 都地さんの研究にまつわるグッズを紹介していただけますか
都地さん:海外の188体育平台へ行く時の必需品である鉛筆と、海外の188体育平台から記念に持って帰ってきたリザベーション?スリップです。
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海外の大学の188体育平台へ行くとき、ボールペンやシャープペンシルの持ち込みが禁止されているところがあり、
キャップをつけた鉛筆は持ち込むことができるんです。
それでゼミの先生が、キャップ付きの鉛筆とペンケースをプレゼントしてくださいました。
このリザベーション?スリップはケンブリッジ大学のものですが、読みたい本を本棚から取り出した後、
この紙を本に挟んで机に置いておけば、3日間その本を、読んでいるその場所で(!)キープすることができます。
学部生へのメッセージ
柴田: 最後に、大学院に進学しようか悩んでいる学生へメッセージをお願いします。
都地さん:無条件に学びたいという気持ちがあり、考えることが好きなのであれば、
大学院に進学して楽しく研究できるのではないかと思います!
柴田: 楽しくお話しでき、時間があっという間に過ぎました!都地さん、今日はありがとうございました!
私の研究ライフ☆ミニ知識コーナー
「博士(学位)論文」
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今回登場の都地さんのように、大学院の博士後期課程に在籍する大学院生は、先生方から研究指導を受けながら、「博士(学位)論文」の作成、提出に向けて、日々自らの研究に取り組んでいます。
博士論文は大学院での研究活動の集大成ともいえるものです。博士課程での所定の単位を取得し、博士論文を提出、さらに論文審査等に合格すると、大学から「博士」の学位が授与されます。
研究を志す人の多くが、大学院博士後期課程に進学?博士論文の執筆?博士号を取得、というキャリアパスをたどって、研究者としての歩みを進めます。
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